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【ネタバレ注意】シナリオ構造から読み解く 「チェンソーマン」第1話が最高すぎる

チェンソーマン 1 (ジャンプコミックスDIGITAL)

こんにちは。ごまです。

本記事では週刊少年ジャンプで連載中の「チェンソーマン」の第1話が本当に最高すぎるので、個人的な感想をまとめました。

未読の方は、ネタバレもあるのでご注意を!

チェンソーマン 1 (ジャンプコミックスDIGITAL)

チェンソーマン 1 (ジャンプコミックスDIGITAL)

 

第1話から面白すぎる

 感想に入る前に、改めて第1話のストーリーを振り返りましょう。

 

第1話のあらすじ

死んだ父親の借金を返済するため、チェンソーの「悪魔」ポチタとともに「悪魔」を退治するデビルハンターとしてヤクザに雇われているデンジ。

貧乏ながらも普通の生活を夢見て暮らしていたデンジだが、ゾンビの悪魔に乗っ取られたヤクザに呼び出され、ポチタもろとも殺されてしまう。

ポチタは死の間際、契約と称してデンジに心臓をささげ、デンジは悪魔の力を手に入れ蘇る。

デンジはゾンビの悪魔を倒し、その後やってきた公安のデビルハンターの女に「殺されるか」「飼われるか」の選択を迫られ、公安のデビルハンターとなる。

 

「欠落感」が全開の主人公

 シナリオの話の前に、まず主人公デンジの魅力について語らせてください。

初めて読んだとき、1話の1ページ目から震えましたね。

なんてったって、デンジのこのセリフですよ。

 

デンジ「木ィ切って月収6万だろ~」

デンジ「この間売った腎臓が…120万」

デンジ「右目が…30万」

デンジ「金玉片方売って…いくらで売れたっけ?10万もしなかったんだっけ?」

デンジ「残りの借金がぁ…3804万」

デンジ「悪魔を一体殺せばだいたい30万」

デンジ「やっぱデビルハンターが一番儲かるな」

 

うわぁ。こいつ、借金地獄で臓器売っててヤバい仕事もしてるぞ。

ジャンプの主人公なのに、明らかに正統派ヒーローじゃない。だってヒーローは借金したり臓器売ったりアングラな仕事したりしない。

しかも借金が途方もない。

もう、こいつの幸せな未来が見えないのよ。BADエンド以外想像できないのよ。

だからこそグッと引き込まれるんですよね。「こいつ、この後どうなるんだろう?」って。

こんな正義、道徳、倫理、プライド、そういうものが何にもなさそうな欠陥だらけの主人公がどう成長するんだろう?ってデンジの魅力ががもう最初からたっぷりから詰まっててもう1ページ目から最高の始まりなんよ。(キモオタ早口)

 この後1話におけるデンジの「目的」について話しますが、その目的を引き立たせたり、目的達成した時のデンジの成長を強調するために必要なものがデンジの「欠落感」になってます。

 

シナリオ構造から読み解く1話の魅力

突然ですが、物語には基本構造があるって知ってますか?

基本的には以下です。

 

主人公目的を達成するため敵と戦う

 

チェンソーマンの第1話もこの構造に当てはめることができます。

主人公は言わずもがなデンジですが、ではデンジの目的とはなにか?敵とはなにか?を紐解いていきましょう。

 

デンジの目的

1話では、作中何度も「夢」という単語が出てきます。

デンジ「この間聞いたんだけどさ、普通食パンにゃジャム塗って食うらしいぜ。まーオレたちゃ普通なんて夢の話だけどな。」

デンジ「夢ェ叶うなら、女抱いてから死にてえな……

デンジは家にいる時は、いつもポチタに夢の話をします。

ヤクザに仕事に呼び出された時は「夢くらい見させて欲しいよな……。」と言っていることからも、つらい生活の中、夢を見ることだけが生きるモチベーションになっていることが想像できます。

 

そんな、夢を見ることだけが生きがいのデンジ。

1話のラストでは不幸なまま死ぬのかと思いきや

ポチタのおかげで生き返り、マキマさんに拾われることになります。

デンジにとっては、まさに宝くじで1等当選したかのような幸運。

第1話は「デンジが辛い現実から解放され、夢見ていた未来に踏み出す」回なんですね。

デンジの目的は「夢を叶えること」。これは作中デンジがポチタに言う「(もし俺が死んだらポチタが)俺の夢を叶えてくれよ」というセリフからもわかります。

せっかく夢を叶えたデンジだが、読者にはその未来が不穏に感じる…だからこそ続きが気になる構造になってます。

 

デンジにとっての敵とは

デンジの目的が分かったところで、ではデンジの敵とは何でしょうか?

デンジの目的は「夢を叶えること」。目的達成の障害となる敵は、物語の前半では「ヤクザ」、後半では「ゾンビの悪魔」です。

 

借金を取り立て、非人道的なことを強いてくる「ヤクザ」。

デンジを殺そうとする「ゾンビの悪魔」。

この2つともデンジの目的達成における障害と言えます。 

なぜ敵が2人もいるのでしょうか?それは盛り上がる展開・結末作りのためです。

 

1話の結末について

面白い物語にはほとんど必ず「どんでん返し」があります。チェンソーマン1話にももちろんあります。

デンジはヤクザに呼び出されて廃屋のような場所に行くと、ゾンビの悪魔の策略でバラバラに殺されてしまいます。

1ページ目を読んだ時に「BADエンドしか想像できない」と感じた通り、ある種期待通りの展開ですね。

読者はここで「やっぱり神様なんかいないんだ、デンジは死んでしまった!!!」などと絶望感に襲われるかもしれませんが、ここで奇跡が起こります。

なんと、ポチタがデンジの体と融合し、半分悪魔半分人間の体となってデンジが生き返るのです。

これがいわゆる物語の「どんでん返し」にあたります。

死んだと思われたデンジがポチタの力を借りて生き返る。ある意味超展開ですが、前半で「人間の体を乗っ取る悪魔もいる」という伏線を張っておくことで超展開に感じさせないようになっています。

 

生き返ったデンジは悪魔のゾンビを倒し、いかにも悪役よろしく高笑いします。

ここで物語の結末に対する期待感がピークに達し、マキマさんが登場してデンジは公安のデビルハンターとなるという、これまた意外な結末で終わります。

 

前半の未来が見えない悲壮感に対し、後半は意外な展開の連続となっている構造も非常によく考えられていますね。

 

デンジは敵であるヤクザ/ゾンビの悪魔を倒したあと、マキマさんに「殺されるか」「飼われるか」の2択を迫られ以下のような会話をします。

デンジ「餌って……朝メシはどんなの?

マキマ「う~ん……食パンにバターとジャム塗って…サラダ コーヒー あと…デザートかな…

デンジ「最高じゃあないっすか……」

デンジが夢見ていた朝食に、さらにサラダとコーヒーとデザートがつくというマキマさん…この会話で、デンジの目的「夢を叶える」を達成したことが分かります。

デンジは辛い現実から解放され、死体の散らばる薄暗い倉庫で明るい未来を見出すという最後の1コマ、最高っすね。

 

最後に

なんかだらだら語りましたが、要するに言いたいことは

チェンソーマンはとにかく最高!みんな読めよな!

以上!

チェンソーマン 8 (ジャンプコミックスDIGITAL)